私たちの母校が創立80周年を迎え、衷心よりお祝い申し上げます。
この間、2万8千名という卒業生を世に送り出し、「ものづくり日本」を支える原動力になって活躍されていることを誇りに思っております。昭和11年、「日本一特徴のある学校を創れ」との命を受け、各界の期待を背負い設立されました。昭和15年、定時制課程の前身となる夜間部化学工業科が設置され、定時制教育も始動しました。戦争という大きな動乱期や幾多の障害も乗り越え、府下有数の工業高等学校として認知されるに至りました。
年号も平成となり、その17年に大阪府立堺工科高等学校に改編されました。「専門分野の更なる深化や高等教育機関への接続」を目指し、校長先生をはじめ諸先生のたゆまぬお取り組みを頂き、各方面の期待に応えられ素晴らしい卒業生を世に送り続けられていることは誠に心強い限りであります。
母校の教育方針に「人格の陶冶」があります。生徒に教育を施し、人格を作り上げることだと考えます。教育は本当に尊いものであり、このことにより安心・安全な社会を築き、国を支える柱になり得るものと思っております。
今年の5月末、「しつけ」のためにこどもを山中に置き去りにし、世間を心配させる事件が記憶に残っていると思います。各方面の懸命な捜索にも発見できず、安否が気遣われておりました。行方不明から6日目に自衛隊演習場内の廠舎(しょうしゃ)と呼ばれる簡易宿泊施設で無事に保護されました。食料も無く耐えられる限界が7日と言われるその直前に救出され安堵した次第です。
場所は北海道南端のヒグマの出没する恐れのある山林で、簡易宿泊施設には水道、トイレに宿泊用マットレスが常備されている施設であったことも幸いしていたのではないかと言われています。事件の発端はさて置き、小学2年の男児の行動力には賞賛に値するものではないかと思います。Tシャツにジャージの薄着で山道10Kmを歩き、偶然かもしれないが簡易施設を探し当て、そこは水が得られ雨風をしのげたことが生存に繋がったのではと見ています。更に初日から移動せず施設にいたこと、マットで体温が守られたことが体力の温存に効果があったとも思われます。
男児の生命力の強さと判断力の素晴らしさはどこから生まれたものでしょうか。これまで受けてきた「教育」の成果ではないでしょうか。家庭、幼稚園、小学校、地域社会での教育です。幼い男児であり、事情聴取もままならず想像の域を脱しないことも多いと思います。然しながらこの事件を通して、教育の重要性を垣間見た思いを致しました。創立80周年を契機に母校の更なるご発展をお祈り申し上げます。
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